天は二物を与えたもうた
VOID
著者:座裏屋蘭丸
立ち読みもあるよ
刷り込まれた記憶を、愛は、超えることが出来るのか――。
マキの元にやってきたヒューマノイドのアラタは、容姿と記憶の一部をコピーしたハイスペックな【愛玩タイプ】。しかも最初に見た人間を好きになり依存する【すりこみ機能付き】。すりこみ機能により愛情を示すアラタを、マキは嬲るように抱く。「ちゃんと愛して欲しい」とアラタは涙目で訴えるが、マキの心には決して融けない「永久凍土」があり……。(公式紹介文より)
座裏屋蘭丸さまの神ぶりはブログ1話のリカー&シガレットでも語らせていただきましたが、今回紹介する作品、ドラマチックの度合いはこちらの方が上回ります。 記念すべきブログ第1話。 著者:座裏屋蘭丸 リカー&シガレット 無料立ち読みもあります お向かい同士で店を構える酒屋のテオとタバコ屋のカミロ。二人は幼馴染みだが、カミロが自分に特別な想いを寄せているこ ...
BL 漫画 おすすめ【幼馴染との切ない境界線】座裏屋蘭丸
えぇ、まるで氷上の貴公子、羽生結弦さまが、自ら記録を上塗りして行くかのようでございます。
あくまでドラマチックという観点ではという意味で、リカー&シガレットが劣るという意味ではありません。
読み終わった後の感想は、ただただ、脱帽。
画力といい、センスといい、ストーリーの深さといい、エロスといい、BL 漫画界のレベルを頭三つくらい飛び抜けているというか。
一冊完結だというのに、二時間の映画を観たかのようです。
いや、映画化して、いいんじゃいかな。番外編、映像BL で紹介したブロークバックマウンテンの監督アンリーに、是非ともメガホン取ってもらいたい。
それくらい、素晴らしい、何度繰り返し読んでも、読むたびに新たな発見がある。
絵も話も抜群てさぁ、天は二物を与えてしまったのですね。
実はケロは昔は漫画を描くのが趣味でした。中学の頃とかクラスの可愛らしいカップル(ノーマル)を題材にノート漫画描いて、回覧板のようにクラス一周して、戻るとオールカラーに塗り絵されてたりとか、懐かしい思い出です。
しかし、ケロのふざけた画力で、漫画家になるなんて夢のまた夢。ネットで拙い小説やブログを綴るくらいでございます。
そんなんでも、漫画の端っこかじった身として座裏屋蘭丸さまを読んでしまうと、まさに、神ですね、天才っすね、奇跡っすね、拝み倒したいっすね、ありがたや、ハレルヤ!!!
力みすぎて、前語りが長くなってしまいました。
ではでは、行ってみよう~
同性の恋人に裏切られた過去を持つマキ。愛した人の胸に住みついていたのは自分とよく似た兄だった。
マキと違いノーマルで妻子もいる兄。
代替え品だった己の惨めさを噛み締め、苦い過去を封印したつもりでいたマキに届いた贈り物。
それは封印した恋人と瓜二つのニューマノイド(デザインされた人工生命)、アラタだった。
容姿と記憶を「実在する人間」からコピーされ、違法製造の摘発で保護された、アラタ。
初めて目にした人間を愛し尽くすようプログラムされていた。
こんなものはいらないから持って帰ってくれっていったのに、昔なじみの友人は、誕生日プレゼントだと勝手に置いていってしまう。
アラタは目覚め、マキを見つめ、その瞬間からマキを愛し始める。
マキの葛藤
「すりこみ」相手への依存度は親を慕う子と同等に強いらしい
心も身体も笑ってしまうくらい簡単に服従させられる。
七年前笑えない終わり方をしたあの茶番劇に
今になってこんなオチが用意されていたなんて…
あの時お前が俺を兄貴の代わりにしたように
今度は俺が…
同じ顔、同じ声。だからなんだ、俺は何をしたい
虐げたいのか、それとも
全く自分の身勝手さに呆れる
最初ははレンとの共通点ばかり探していたのに
今はレンとの違いを見つけてはホッとしている
アラタの願い
マキさんの心にずっといるその人が
俺だったらよかったのにって羨ましくなるんだ
アラタの気持ちが「すりこみ」で意図されたものであったとしても、その一途さに切なくなります。マキは裏切られた負の感情を、アラタにぶつけ冷たくあたり、物のように扱ったりするのに。
でも、アラタはレンの一部をコピーしているけれども、全く違った別人なんだと意識するようになって、二人の時間が積み重なっていきます。
でも、マキはアラタへ気持ちが傾くほどに、やるせなさが募っていく。
マキの心の中
以前は兄の代用。
そして今度は….
俺に対する感情は単なる「すりこみ」
そうか、…それが悲しいのか
そしてマキは決心する。アラタの「すりこみ」を解除しよう。
全てをVOID(解除)して、それからお互いを見つめなおそう。
誰かを愛するってただの思い込みかもしれない。記憶に手を加えられたとしたら…なんてあっけなく儚い。
だけど意図されたすりこみでさえ、愛するという感情は、なんて純粋で無垢で人をこんなにも強くしたり、弱くしたり、揺さぶる力を持っているのでしょう。
すりこみ機能付きヒューマノイド。
ふっ、欲しいよ、すっごく、ケロも欲しい!!!
え、結局、機械でしょ?虚しくない?という意見もあるかもしれない。
いや、全然、オッケーっす、すりこみ機能付きが割高でも、オプションつけるよっ。
いくらさ?
いくらさ?
いくらなんだよ?
はっ、すいません、物欲に踊らされオラオラしてしまいました!
いやん~あたしも欲しいよ!って思う愛されたい族の物欲女子は、突撃してみるべしっ!