下克上 麻々原絵里依

BL 漫画 感想【下克上ラブ(御曹司と庭師)】麻々原絵里依

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お金で買えない愛がある

茅島氏の優雅な生活
麻々原絵里依 原作/遠野春日
無料立ち読みもあるよ

茅島氏はやんごとなき筋とも縁が深い孤独な資産家。そんな茅島氏が何を思ったか、突然、庭師の家を訪れ……告白をした。高飛車で一方的な求愛に庭師は怒り、意地悪な注文をつけたが……。【公式紹介文より】

わたくし、このBL漫画をご案内させていただきます茅島(かやしま)家の見習い執事ケロでございます。これ以降、ケロの感想&作品紹介はケロ作の二次創作風に進めていきます。どうぞよろしくお願いいたします(二次創作なので、本文のストーリーをそのまま書いているわけではありませんあしからず)御曹司と庭師が織り成す甘い下克上ラブを堪能ください。

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わが主人、茅島澄人さまは旧華族の血を汲む麗しき美青年でいらっしゃいます。ご両親を早くに亡くされ、近い親族もいらっしゃらず、お静かに孤独な日々を過ごされていました。

もちろん、二十代でお若いわが当主にはひっきりなしにパーティなどの招待状は届くのですが、澄人様はそのような賑やかな場所には興味を示さず、必要最低限でしか社交場に姿を見せることはありません。

平成の世とは思えない、ノスタルジックな時間がここ茅島家には流れております。邸宅は広大な美しい庭に包まれ、そこで働く20名ほどの使用人はただひたすら澄人さまが日々を穏やかに過ごしていただくために存在するのです。

先代が愛した自然美を最大限に生かした英国的庭園には人工池や果樹園まであり、三人の庭師が管理維持しております。

執事はこの全てを取り仕切る裁量が必要で、上司でもある執事、波多野氏は本当に執事の鏡というべき人物。まだこの屋敷に来て5年の見習いのケロには雲の上の存在ですが、その波多野氏に先日呼び出され大事な仕事を任されました。

波多野氏が休暇をとる一週間、代わりに執事の仕事を任せたいということでした。出来るかと問われ、もちろんお任せくださいと答えました。波多野氏は少し難しい顔をして話を続ける。絶対に口外してはならない秘密があると。その秘密ごと一週間執事の仕事を任せるのだと。

朝のお目覚めの珈琲を澄人さんの寝室へお運びするのは大事な執事の仕事。莫大な財産を引き継いだ澄人さまはお仕事などはしていらっしゃらない。目覚めてからその日の気分で一日の行動をお決めになられる。低血圧で寝起きの悪い澄人様はベッドトレイに用意した珈琲をゆっくりお召し上がりになりながら、今日一日をどのように過ごされるのかを決められるそうだ。

シャワーかバスどちらにされるのか、朝食を召し上がられる場所はコンサパトリー(ガラス張りのガーデンルーム)がよろしいのか、お出かけされる場合はお召し物の用意など、出不精にならないようさりげなく助言を入れながら外に興味を持つように誘導差し上げるようにと波多野氏から言付かっている。あと、気になるのは口外不問の秘密のほうだが……。

信じられない。澄人様のベッドで一緒に過ごされている相手が、相手が……庭師だなんて。皇族の姫君でさえ娶ることができるであろう由緒正しき高貴なお家柄の澄人さま、一体どうされてしまったのか。

その秘密を告げられたときの私の動揺が伝わったのだろう、波多野氏がゆっくりと私に諭した。次の茅島家の執事の役を背負う気概があるのか。このお二人に生涯尽くす覚悟があるのかと。澄人様は今、愛する人を見つけられてとても幸せそうなのだ。主人である澄人様が幸せでいらっしゃる事が何よりも大事なのだと。

 

いよいよ今日から波多野氏は一週間の休暇に入られた。めったに休まない彼の代わりに、初めて澄人様へ朝の珈琲を運ぶ。カップは二つ用意した。寝起きの澄人様へお会いする特権は、茅島家の正当な執事にのみ許された仕事。緊張してソーサーがカチカチと指の震えを伝えてしまう。うまくこなせるだろうか、緊張しながらドアをあける。

ベッドの中でお二人はまだ寝息を立てていらっしゃいました。本当にいた。澄人さまの横で眠るこの男は最高学府の法学部を卒業したにもかかわらず庭師をしているという変わった奴だ。知性があり男前で……長い睫毛を伏せて澄人様をそっと抱いている様子は映画のワンシーンのようで…。男同士だなんてと最初は思った自分だったが、二人で寄り添うその様子があまりにも官能的で美しく、感嘆のため息が漏れてしまった。

人の気配を察したのか、まずは庭師が目を覚ました。傍らにたたずむ私を見て、少し驚いた顔をみせた。

「え?あれ?波多野さん……はどうした?何でアンタが……」

「波多野氏は今日から休暇を取られてまして、一週間代わりにお世話させていただきます」

「そっか…、まぁ、アンタもおどろいたっしょ?俺がこんなところにいてさ」

「いえいえ、今日からのために聞いておりましたから、あ、ブラックでよろしいですか?」

「あぁ、サンキュ。」

上半身だけ起こして、庭師はカップに口をつけた。

「まぁ、ご主人様の気まぐれだから深く考えないでくれよ、ほんのひと時のお戯れさ。ご縁談もいっぱいきている、男なんかに入れ込んでいいご身分じゃないことくらい、この人もわかっているさ」

「……わたしにもコーヒーをくれ、波多野の休暇は今日からだったかな」

むっくりと庭師の背後のシーツが盛り上がり、ご主人様…澄人さんの声が響く。ご機嫌が悪そうなことは声色で伺えた。これは低血圧のせいか、それとも…

「澄人さま、お目覚めですか?おはようございます。コーヒーはいつものでよろしいですか?お熱いのでお気をつけくださいませ」

と、申し上げたのだが…

「っ熱!!!」

「あぁ、申し訳ございません!」

「ったく、アンタは毎朝同じことしてるな、熱いから気をつけろと言われていただろうに、ったく、ほら、見せてみろ」

そっと、庭師は澄人さまの顔を見つめると「ちょっと口の端が赤くなっているだけだ、大丈夫」というと、ちゅっと小さな音を立ててその口の端にキスを落とした。

その瞬間の澄人さまの顔といったら。

このお屋敷に来て五年。こんな澄人さまのお顔を初めて見た気がする。

甘く、幸せそうで、とろけるようなお顔。

いつも淡々として、感情の起伏の薄い澄人さま。ご両親が亡くなられたときですら取り乱すことなく寂しい眼差しを向けられていただけだったというのに。その高貴な血筋のせいか、陶器の人形のように浮世離れした静かで美しいたたずまいを醸し出す孤独な御曹司。

その彼が息を吹き込まれたように頬を上気させて庭師を見つめる。

「…こっちの唇の端もひりひりする」

「そっちは特に赤くなっていないぞ?」

「…ひりひりする。こっちも手当てしろ」

「はいはい、ご主人様」

ちゅっと、反対の唇の端にも庭師がキスを落とす。澄人さまは満足げに小さくうなずくと、再びカップに口をつけた。

「二人でゆっくり朝はバスに入りたい、用意しろ」

「かしこまりました。ご朝食はどちらにお持ちしましょうか。お二人分をコンサパトリー(ガラス張りのガーデンルーム)に用意いたしましょうか」

「いや、俺は朝食を遠慮するよ。誰かに見られたらまずいだろう」

「お前は私の恋人だと他の者に知れるのが嫌なのか」

「嫌って言うか、そりゃ、皆心配するだろうにご主人様が庭師なんかに入れ込んでいれば」

「わたしは構わない。みんなも知ればいいと思っている」

「あんたの気まぐれがどれだけ皆に心配かけると思ってんだ、いい加減にしろお坊ちゃん」

「お前はいつも意地悪だ。いつになったら私を好きになる」

澄人様の声が震えていて心が痛くなる。澄人さまの片思いなのか?いや、先ほどや火傷された澄人さまを心配して覗き込む庭師の様子を見れば、お互いが想い合っていることは一目瞭然だ。

「今日は誰にも知られないでお二人で過ごされたらいかがでしょうか」

思わずそんな提案が口をついた。当のお二人は、そんなことを言い出した私を驚いたように見つめている。

「二人でって言ったって、このお坊ちゃんは目立ち過ぎるんだよ、全く」

確かに。専用の美容師にスタイリストまでついていて、澄人さまのお召しにになる衣服は常に最上級品だ。それにこの美貌と来たら、目立たないではいられない。

ローマの休日のように過ごされたらいかがでしょう。澄人さまには私のジーンズをお貸ししましょう、洗いざらしのTシャツも」

「ローマの休日?」

澄人さまの瞳が、キラキラと輝きだした。

「裏庭から抜け出して、電車でお出かけになられてみれば? 朝食はファーストフードでモーニングセットなんていかがでしょう」

「おいおい、そんなもんご主人様の口に合うわけないだろう」

「あのMのマークの看板の店だろう?私は一度食べてみたいと思っていた。それにジーンズってブルーの…あれのことか?着た事もないが、お前とサイズは合いそうだな、すぐに持って来い」

「かしこまりました」

 

リーバイスのジーンズにBEAMSのTシャツ。こんなカジュアルな装いでも品があるとは恐れ入った。でも、砕けたファッションは澄人さまを年相応の若者にみせていた。

「自分じゃないみたいだ。サイズも丁度いい。ケロはすごい、ローマの休日は私のお気に入りの映画だ」

この屋敷には驚くことなかれ映写室まで備えているのだ。個人のミニシアター。レンタルDVDなんかではなく本当に小さな映画館さながらの設備。業者が定期的に作品をおろしている。外の映画館になんて行ったことないんだろうな。

「今、ゆったりしたカップルシートがある映画館も多いですからね。街で映画鑑賞なんていうのもよろしいかもしれないですね」

澄人さまが期待の眼差しで庭師を振り返る。

庭師は仕方ないなぁといった様子で澄人さまを見つめ返す。

「この格好で出掛けなきゃ、もうその服を脱いでくれないんだろう?ファーストフードは口に合わなくてもちゃんと食べろよ。約束できるなら一日デートしてやるよ」

雇主と雇われ者の会話ではない、ただの恋人同士の憎まれ口合戦。実はノロケられているだけなのかもしれない。

「ちゃんと言うことを聞く。だから電車の切符の買い方を教えてくれないか」

「わかったよ」

使用人の目を避け、そっとお二人を裏庭から見送る。

「いってらっしゃいませ、お気をつけて」

数歩進まれたところで、そっと澄人さまが指を伸ばし、庭師の手に触れるのが見えた。

微笑ましい気持ちでいっぱいになる。

波多野氏の言葉がよみがえる。

”このお二人に生涯尽くす覚悟があるのか”

えぇ、勿論ですとも。今の私には躊躇なく誓いの気持ちが湧き上がる。

望む間も無く全てを手に入れられているご主人様。

でも庭師は、澄人さまが生まれて初めて切実に自ら望まれた想い人。

澄人さまのお幸せが、何よりもこの屋敷の者達の願い。

今時、個人に仕える執事なんぞ、時代遅れだと言われることもしばしばだが、私はこれからも茅島家の次の執事になれるべく、精進してまいります。

皆さまも、お二人のますますの恋の発展を、どうぞ傍らで見届けさせてくださいませ。

(fin)

 

 

いかがでしたでしょうか、つたない二次創作で失礼いたしました(汗)これは登場人物を使ってケロが考えたワンシーンで決して本文ではありませんが、雰囲気を味わっていただけたらと思い書いてみました。
……と、こんな風に淡々とながら優雅に流れていく茅島家の日常を描いた作品です。三部作になっておりますが最初の一冊だけでも単独で楽しめる内容です。

茅島氏の優雅な生活
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非現実的で優雅で淡々としながらも2人の距離感が近づいて行く様子が素敵です。

気づけば庭師はどっぷりと澄人さまに堕ちているんですけどね。

澄人さまも、全く興味が無かった外の世界を、庭師をキッカケに少しづつ広げていかれる様子が微笑ましいです。突然免許を取って、庭師をドライブに誘ってみたり。その途中の道端のラブホに入りたがったり(苦笑)。

お金で買えない愛がある。箱入り御曹司と庭師の、下克上ラブ。英国式庭園でアフタヌーンをいただきながら読みたいBL漫画でございます。どうぞご覧になってみてくださいませ!

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