顎クイKISSに崩れ落ちる
恋が落ちたら
著者:上田アキ
無料料立ち読みもあるよ
ある夜、彼氏にフラれた直後の伊瀬の頭上に、なぜかパンツが降ってきた。落とし主はどこか放っておけない雰囲気のある菱本という男で、木にひっかかってしまった洗濯物を一緒に取ることに。お礼がしたいと言う菱本の自宅に上がると、実は伊瀬のことが気になりワザと洗濯物を落としていたと告げられる。さらに「おじさんには興味ないでしょうか?」と迫られてしまい――…?
BL史上最高のオジサマ降臨でございます。上田アキ先生、初めて読む作家さんで、不意打ちの最高キャラの登場に胸震えました。
ダンディ
ジェントルマン
スマート
セクシー
こんな呼び方が大袈裟でないオジサマ。三揃えのスーツでビリヤードとか、素敵すぎる、心拍数跳ねたわぁ。
離婚したばかりで家事が苦手で汚部屋に住んでいるところが完璧すぎなくてまたいいかも。
そして世話焼きのオカン気質で、最後はウザがられて振られパターンを繰り返すゲイの青年。
手酷く公道で「お前、カーチャンみたいでめんどくせぇの、俺もう別の奴いるから連絡するな!」と罵られて別れ話されているところをマンションの窓からオジサマが見ていたのが出会いのきっかけ。
お互い欠けているものがジグソーパズルのワンピースのようにはまり、距離が縮まり、家事を手伝ったりデートなんてする関係に。
試し読みのとこまでだと、冴えないオジサマに見えちゃいますが、外でデートの待ち合わせをするあたりからオジサマのターン!まぁ、仕事帰りのオジサマのスーツ姿の麗しいこと。さりげないエスコートのスマートなこと。
待ち合わせの時に冷えた指先を温める為にコーンスープの缶を渡されたり、歩道を走る自転車から身を守るために身体をさりげなく引き寄せられたり、剥いた蟹を口元に運んでくれたり。
大きな包容力にもたれかかる安らぎといったら、もう、♥︎惚れないわけにいかない♥︎
でも、今までの歴代元カレ達が女に戻っていったトラウマもあり、なかなか結婚経験まであるノンケのオジサマ相手に踏み出せない。
エロ中心のものではありませんが、キスから始まり、そういう場面になるとめちゃくちゃ官能的です。行為そのものの描写よりも、そこまで辿り着くまでが、凄いのなんのってもう。
キスだけで、頭が痺れて腰が砕けちゃう、どんだけテクニシャンなの、オジサマぁ。
しかも柔らかい物腰でありながら、じわじわと獲物を追い詰めていく様など、オジサマ、黒豹とかチーターみたいなんす。首筋噛み付いちゃって捕食していくんだわ、逃げられないんだわ。ちょ‥やばいやばいやばい×100
フランス映画のような、こんな官能的なラブシーンをBL漫画で拝読する日がくるとは!
冬、玄関先のキスからベッドへ辿り着くまで。革の手袋の指先を噛んで抜く仕草から始まり、ゆうに25ページかけての圧巻の描写。ページをめくる指先が(電子書籍だけど)震えました。なんですか〜っ!
自分ばっかよくしてもらってすみませんなんて、言ってる受け(多分エッチのときも歴代彼氏にはぞんざいな扱いしかうけていない)に、オジサマが耳元でおねだりするんすよ。
「それより他の言葉が聞きたいですね」
「えっ…と」
「言って」
「好き…です…もっと菱本さんと…こうしていたい…です」
年下の恋人のたどたどしい告白に、オジサマの表情がもうね、もうね、人生の特別な瞬間を噛みしめているっていうの?素晴らしいですわ、もう、忘れられないシーンです。
もう、ここまででも、やばいやばい、凄いもの見ちゃった、と心拍数爆発なのに、さらなるカウンターパンチが翌朝にきた。まだまだきたぁぁ。
寒い朝、片肘ついて傍らで眠る恋人を愛おしく見つめるオジサマ。上半身がセクシー。やがて目覚めた恋人が、いつものオカン気質で寒い中、一人起き上がり、コーヒーでもいれてくるから待ってて、なんて行こうとした瞬間…
いいから居て
そんなにがんばらなくていいから
寒いし、もう少し…ね?
そういいながら、ふたりの体温の染みたベッドへ手首を掴まれて引き戻され、甘いキスのひとつ落とされた日には…
廃人になるわぁ。もう、昨夜の余韻とまざってさぁ、トロトロの蜂蜜漬けですわぁ。
一冊全部表題作。じっくりまったり堪能しまくり。冬、温め合う初々しい恋の芽生えを覗いたので、春夏秋と続くふたりのこれからも見させていただきたい。続編熱烈歓迎。
そうそう、一番親しい同僚に、オジサマが僕の可愛い恋人と、さらっと報告するシーンも良かったな。
お前ってそっちもいけたっけ?とさすがに驚く同僚に
今まで機会もなくて考えもしたことなかっただけで、僕はどうやら性別が恋愛の前提には無いのかもしれないな
なんて、大人な告白。しかぁし、オジサマの惚気た幸せそうな顔に同僚は
へぇ、お前もそんな顔するんだな、と、
こんな会話の端々にもオジサマにとって今回の出会いが、いかに特別な恋かが垣間見えて、胸キュンキュンしちゃうのでした。
読んだ後、手を合わせて作者、上田アキ先生にご馳走さまを言いたくなった。
いやぁ、他の作品も続けて読んで参ります。新しい胸震える作家さまとの出会いに乾杯でございます。