男はお前しか好きじゃないんだけど
ヘブンリーホームシック
京山あつき
無料立ち読みもあるよ
「ねえ、オレらゲイなの?」
イギリスで再会した元同級生の太田(おおた)と行貞(ゆきさだ)。ホームシックで参っていた2人は足を絡め、腕を抱き、ひざ枕を許したり……。その行為はしだいに心も浸食し、互いに離れがたい存在になっていた。
ある夜、ベッドですり寄って来る行貞にたまらなく愛しさがこみ上げた太田は、強引にキスをして、衝動のまま欲望を押し付けるのだが──。
非日常に揺れるエロティック・異国ステイ。【公式紹介文より】
五日前に出会ったのだよ、この作品に。
三日続けて毎日三、四回繰り返し読み、その後も毎日読まずにいられない。ねぇ、まだどきどきしているよ。どうしようどうしよう。
で、勢いつけてこの作家さんのほかの作品もいくつか読んでみた。
でも、うん、ケロ的にはこの作品が特別だと思った。他の作品も評価は高いみたいだが、いくつか読んだ中で繰り返し読みたくなると思ったのはこの作品。この出会いに衝撃だわ。
絵は最初は好みではなかった。ゆるすぎて、心もとないというか。でも一冊通して読むと全然印象が変わる。このゆるさがいいと思っちゃう。不思議だ。
海外転勤先のロンドンで高校時代の部活仲間に偶然出会う。しかも、泣きべそかくくらい日本が恋しくて精神的にもギリギリの状態のその日に。
この二人は日本にいたら絶対に恋人同士になんてならない。ノンケ×ノンケだし。でも、気が触れそうなほどの孤独の中、運命的に再会してしまった。
ケロは旅行でしか海外に行ったことないけれど、つい最近はじめて一人旅で数日台湾へ行った。台湾は日本に似た雰囲気あって親近感を持ったし、人も親切でとても居心地も良かったんだけれども、異国のなかで日本がどれだけ特別な場所であるかを気付かされた。
日本の当たり前の日常や常識は、他国では夢物語なのだと。日本人であることを愛おしく思った。
この作品に描かれているロンドンはリアルすぎる。
給湯器が壊れたら修理頼んでも1週間お湯が出ないとか、アパートの電気のブレーカーが落ちちゃうとか、動物の面影がある固まり肉しか売っていないとか、びっくりした。え?え?大英帝国様だよね?
確かにこないだ友人がフランスの姪にプレゼントをゆうパック?で送ったら、迷子になった挙句に届かず、お詫びもなく決められた保証しか戻らなかったと言ってた。時間帯指定で荷物届いて再配達も指示出来てなんて他国では普通じゃないらしい。
数日の旅行なら異国情緒で済ませられても、転勤で暮らすリーマンにはちょっと辛すぎる。本当に追い詰められていくのがリアルで胸が痛くなる。主人公のひとり、太田なんてもともとは超楽観主義みたいな感じだから余計に落ちぶれた感じが悲壮感溢れててさ、友達同士だったのに寄り添って眠りたくなるのも納得できる。
ロンドンで出会った夜、太田の心の中
ユキサダが泊まってくれる。
今日は泣きながら寝ないですむ
太田は自分がホームシック末期でやばいと思ってはいたが、後からユキサダはこの時もっと重症だったと知る。ユキサダは「本当は手をつないで寝たかった」そうだ。
太田の心の中抜粋
再会した夜ユキサダが、フトンの中で足を絡めてきたときにはぎょっとした
ぎょっとしたけどそんな風にしたくなったユキサダの気持ちは
オレにはすごくよくわかった
すっごいよくわかるんだけど…
それにしてもあのユキサダがあんなにまでひっつきたがりになるとは
もっとドライな奴だと思っていた
ホームシックは恐ろしい
ユキサダは魔性だと思う。なんでもない顔して、ぴったり太田に引っ付いてきて、太田の心を揺さぶる。
ユキサダ、オマエ、涼しい顔して太田ちゃんを煽って、キスされたら「え、なに?」なんてびっくりした顔してるんじゃねぇよ。この天然魔性!天然たらし!
腹が立つやら、早く墜ちてしまえと背中を押したくなるやら。
ユキサダの台詞
太田…オレ、正気かどうか自信ない
ホームシックで寂しいから…たぶんお前もオレも正気じゃない。
俺は後悔してもいいんだ
オレ、スキヤキに釣られて来たんじゃないよ
太田がしたいんならしようって思って来た
覚悟を決めた二人。
男はお前しか好きじゃないんだけど、
それでも、ねえ、オレらゲイなの?
戸惑いながらも感情に身を任せ、愛を育んで行くリーマン二人が可愛くて、愛おしくて、なんだか涙がでるんだよ。
今日読んでも、明日も、繰り返し読みたくなる。そんな一冊。出会えた喜びをあなたにもおすそ分けしたい。