日高ショーコ【初恋のあとさき】BL 漫画 おすすめ

今でもお前に未練タラタラなのわかって気分よかった？

初恋のあとさき
著者：日高ショーコ
無料立ち読みもあるよ

学生の恋。自分の気持ちすらコントロールできずに、傷つけあった想い。

学校という場所が世界の全てだった。そこから外れてしまうことが怖かった。１０年前の幼い恋でありながら、想いはもてあますほどの熱を帯びていた。

男しか好きになれない事に気付き始めた春山。初恋の相手は同級生の仁科だった。

クラスの人気者の春山に好かれて、ただそれが嬉しくて流されたノンケの仁科。男同士の情事。こんな関係は学生時代の戯れだと思っていた。

卒業したら一緒に暮らそう。

怖かった。そう嬉しそうに語る春山との温度差が怖かった。

酷い言葉を投げつけて逃げ出した仁科。

人を信じなくなった春山。人を愛さなくなった春山。深入りしない男達との情事を渡り歩きながら淡々と生きてきた。ただ一つ、カフェのオーナーという夢は叶え、店はそれなりに賑わってはいたが。

仁科は普通に生きていた。大手企業のサラリーマン、見合いで結婚もして、春山の事など思い出すこともなく。

だけど、初恋の相手と一緒になりたいから離婚して欲しいと唐突に妻から言い渡される。あなたに愛されてると感じられなかったと。

人生につまづいて始めて気づいた。ただ普通に生きる事を優先してきただけのつまらない自分に。

そんな時、偶然入ったカフェで美山に再会する。

高校の時からの夢を叶えている美山に。

仁科を見ても、客に対する態度でしか接してこない美山

俺そんなに変わった？

自分だと言い出せずに、繰り返し店をおとずれる仁科

再会した瞬間から、もちろんあの仁科だと、春山はすぐにわかったがあえて知らんぷりしていたのに、度々来る仁科に我慢の限界をこえる。

懐かしい目で見やがって。
仁科にとっては、もうただの思い出でも、俺にとっては違う。

あの時、お前は最後なんて言ったっけ。

お前もそろそろ目を覚ましてマトモになれよ

だっけ？

こんな風に、10年ぶりの再会は全然喜ばしいものではなかった二人。

失恋の痛手で、とことん歪んだ美山の拒絶はとりつくしまもない。

でも‥

怒りを見せる美山の手にそっと触れると、一瞬動揺して美山は黙り込む。こんなところ、昔のままだ。どんなに怒っていても、触れると黙る。

ここまで読んでケロは思いました。
仁科はずるい男だと思う。離婚していなければ再会したときに男と寝た過去なんて、奥さんにばれたらやばいとか思って逃げ出したくせに。離婚して挫折して寂しくて…そんな状況での再会だったから、のこのこと美山に近づいてくる。

そして美山は心を鎧で覆うほどにかたくななはずなのに、手に触れられただけで冷静でいられなくなるほどに、今でも仁科への想いは変わらず熱い。ひねた性格のキャラだけにその反面の繊細さが切ない。

手ぇ握ったくらいで、美山がすっかり気を許すと思ったら甘いわぁ、仁科ぁ～

もうこれで終わりだと唐突に仁科を拒絶する美山。

だよね、だよね、美山の傷は深いんだよね。可哀想に振り回されてさ。仁科帰れ！帰れ！（ケロ、美山の味方）

逃げ帰るようなタクシーの中で、さっきの美山の叫びを反芻する。

“今、気分よかったんだろ？高校ん時みたいにさ”

この作品は前回紹介した『嵐のあとに』のスピンオフです。単独で読んでも特に問題ないですが、『嵐のあとに』のその後の小話も収録されているので、『嵐のあとに』を読んでいるとわかりやすくはあります。でもケロはこの『初恋のあとさき』のほうを先に読んで、一年以上あとになってから『嵐のあとに』を読みました。

傷ついたトラウマで踏み出せない美山を、仁科が導いていく。懺悔のように。

俺たち十年前に戻ることも
やり直すこともたぶん出来ないけれど
また最初から新しく始めることは出来ると思う

ほら、石ころみたいに投げ捨てた二人の関係が、再び輝きだしたよ。人生って捨てたモンじゃない。大人になった今だからこそ、相手の歩調に合わせる恋が出来るかもしれない。
応援したくなる初恋のそのあとをじっくりとご堪能ください！すごくすごく心に刺さる作品です。

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