王子様が出てこないBLだってときめくよ
そして続きがあるのなら
著者:内田カヲル
立ち読みもあるよ
漫画家になる夢と諦めた男がずっと気になってた漫画少年。
偶然の再会からふたりの時間が動き出す――!?
ガチムチ系はあまり興味のないケロです。
男同士でありながら、どちらかは女よりも美しいなんていうのがBLのお決まり路線でありますが、たまには脱線して視野を広げなくてはいけません。
ほら、ほんの少しのその勇気が、思わぬ秀作に出会える岐路になったりするのでございます。
BL漫画が好きでも実写版のゲイビデオには興味がない腐女子がほとんどかと思います。だって、夢物語が壊れちゃうし。別モンですよね。
でも、内田カヲルさんが描く男子は克明に胸板の厚みからスネ毛まで描かれています。あぁ、マジで男同士なんだなと今更に再認識するBL漫画。
男同士さがリアルです。苦手だなと敬遠する方も多いでしょう。でも、この作品はそんな先入観をじわじわと払拭させるだけの魅力があります。
オラオラ強気で俺様な先輩、坂口。
へタレワンコだけどマンガの才能は半端ない後輩、藤代
高校時代より10年経ってからの再会。
惰性でマンガ編集をしている坂口と、マンガを描かなくなったコンビニ店員の藤代。
なんでマンガ描いていないんだと問われ
高卒だし…絵の勉強なんてやったコトナイですもん。プロなんて絶対無理とのたまう藤代。
坂口は胸倉を掴んで、才能カタマリのクセにと吐き捨てます。
さえない人生をさ迷っていた二人。ある意味これは二人三脚で駆け上っていくシンデレラストーリでもあります。
麻雀マンガ雑誌の編集者である坂口は、穴を開けた作家の代打に藤代にマンガを書かせてデビューさせますが、大手の出版会社から声がかかる坂口を大きな世界に放つため一度その手を離します。
藤代がいつまでも坂口との仕事の仕方に執着するので、新しい編集担当が坂口に面談したところ、あまりに横柄な態度に最初は漫画家を取られてふてくされているのかと思ったのですが、その後の台詞に坂口が一番の藤代のファンなのだと気付かされます。
坂口の台詞、抜粋
アイツの才能に目を止めてくれてありがとうございます
ウチではあれ以上売ってやることは出来なかったんで…
最高の作家です、よろしくお願いします
坂口の男気にキュンとします。口が悪いけど優しいんだよね。でもこのオラオラぶりで実は受けっていうのも意外性があって目が点ですわ。
結局なんだかんだあって、坂口は藤代専属のマネージャーとなり、スケジュール管理やら、家事やら、アシスタントの世話やらをこなし、藤代がマンガのみに打ち込める環境を整えます。
帰ろうとする坂口への藤代の台詞
あの~
そろそろ一緒に住みましょうよ…
だ、だって終電気にしなくていいし…
そ、そうじゃなくて…俺は
先輩の全部がないとだめなんです
売れっ子先生扱いになっても藤代はずっと、先輩のためだけに漫画を書いているのだという一途ぶり。
ケロが好きなシーンは、実家との折り合いの悪い藤代が、親に坂口が恋人であることをカミングアウトし勘当された時に、坂口が俺も勘当されてやると自分の実家に藤代を連れて乗り込んでいく場面です。
「こいつと添い遂げることにした」
どきゅ~ん!!!!!
ちょっと、お父さん泡吹いてるよ直球すぎて。
さすがに親不孝者って怒鳴られているよ、おいおい。
でも昭和臭の漂うおじいちゃんが、孫が一人増えたと思えばいいと丸く収めてくれて、二人揃を迎え入れてくれる場所が出来たことにホッコリ♡。
この作品は三部作になっています。一作目だけでも単独で楽しめますが、たぶんよっぽどスネ毛LOVEが生理的に受け付けない女子以外は、三部作全てを見届けたくなるでしょう。
そして続きがあるのなら-1-
↓
帰らなくてもいいのだけれども-2-
↓
そしてすべてが動きだす-3-
さぁ、ためらってはいけない。スネ毛だってあるさ、だって人間だもん。
新しいジャンルへチャレンジしてみよう!